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ビジネスパーソンの8つの欲求

 ビジネスパーソンの心理を覗いてみよう。そこには、自分で選びたい、成し遂げたい、征服したい、認められたい、支配したい、危険を避けたい、仕事をしたい、公平を求めたい...。この8つの欲求がある。この心理を理解し、活かすことがリーダーの役目である。


人の心の根底にある欲求

 場外馬券売場に群がる紳士たちの目が輝いている理由として、5つの条件があることは、前回述べたところである。
 今回は、少し違った角度から、人が持つ欲求というものについてみてみたい。

 筆者のコンサルタントとしての経験則として、ビジネスパーソンの心理には、以下の8つの欲求を見出すことができる。

(1)「選びたい」という欲求
 ――自分で選んだ物には愛着が持てるが、与えられた物にはさほど愛着がもてない。

(2)「成し遂げたい」という欲求
 ――目標を持つ、あるいは与えられると、それを達成しようという意欲が出てくる。

(3)「征服したい」という欲求
 ――競争相手がいると、相手を負かしたい、勝ちたいという意欲が出てくる。

(4)「認められたい」という欲求
 ――「豚もおだてりゃ木に登る」である。誰しも褒められて悪い気はしない。

(5)「支配したい」という欲求
 ――自分の物にしたいと思い、自分の物ほど大切に扱う。

(6)「仕事をしたい」という欲求
 ――「土方ころすにゃ刃物はいらぬ、雨の3日も降ればよい」。説明はいらないだろう。

(7)「危険を避けたい」という欲求
 ――「君子危うきに近寄らず」。誰しも危険な地域や仕事は避けて通りたいものだ。

(8)「公平を求めたい」という欲求
 ――依怙贔屓(エコヒイキ)を嫌う心理は誰にでもある。

 組織のリーダーにとって大切なことは、この8つの心理をよくわきまえ、部下とのコミュニケーションにおいて配慮を忘れないことである。それが部下のモチベーション・アップにつながり、組織の活性化につながっていくのだ。

部下の心理を読むことがリーダーの仕事

 仕事を指示し、作業分担を決めるにしても、これらの欲求を常に意識して、実施することを忘れてはならない。
 指示・命令・任務付与には、モチベーションへの影響やタイミングを考えるとともに、部下に対して、その目的・理由の適切な説明が求められる。相手の理解・納得を得ること、納得を得るまでに至らない場合でも、少なくとも理解を得るために必要な措置は講じておく必要がある。

 こうした欲求は成人に固有の心理であるとは限らない。むしろ子供のほうがそれらを端的に表す場合が多い。自我の確立された成人がこうした欲求を自ら口にすることはむしろ少ない。
 であるからこそ、部下のそうした心理を読み取り、適切に対応することが、リーダーには求められている。


竹本次郎(たけもとじろう)/経営コンサルタント。鹿児島大学卒業。東京都労働経済局商工指導所、上武大学大学院教授を経て現職。著書に『トータルコストダウンの進め方』、『コンサルティング理論と技法』など。

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