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「考え方のヒント(竹本)」カテゴリーの記事

"言い出しっぺ"を活かす組織づくり

"言い出しっぺ"を作り、その者を評価する仕組みをつくることが重要である。引っ込み思案の中からは何も生まれてこない。口火を切る者が出やすい雰囲気をつくるのがリーダーの役割である。

引っ込み思案が蔓延していませんか

 組織内で何かの課題に対して対応策を考え、それを実施しようとする場合、互いに引っ込み思案となり、「私がやります」という人が出てこない場合が多い。とりわけ初めて顔を合わす会合ではその傾向が強い。

 誰かが口火を切って発言してくれるだろう...と期待する心理は、実は微妙なものであり、様々な思惑が潜んでいるようだ。

 その内情を拾ってみると、
 (1) ここで下手に発言すると面倒な仕事を押し付けられそうだ
 (2) あいつは軽い人間だと思われるのが嫌
 (3) 自分なりの案は持たないわけではないが、しばらく様子をみよう
 (4) 下手に発言すると仲間はずれにされかねない
  ...等々であり、自分から切り出すことをためらってしまうのである。

 リーダーは、こうした空気を取り払ってしまう役割を果たす必要がある。

 発言の端緒を掴む方策としては、
 (1) 座席の並び方で端の方や真ん中の方から指名する
 (2) 当日の月日などに該当する番号や席順の者を指名する
など無作為の方法がよい。しかし、発言者を指名するやり方は次善の策であり、決して良策とは言いにくい。
 その場の雰囲気として、自由な意見やアイデア発言が次々と飛び出してくる状況を作り出すことが大切である。
 そのためには誘発する発言が必要であり、たとえば事例をあげるなどして、「このような方向でこのような状況の出現を望んでいる」ということを、その場にいる全員が判るように説明することである。
 その場合、留意すべきことは求める方策を織り込まないことである。リーダー自らが実行案の例を持ち出してしまうと、「何だ、リーダーはすでに成案を持っているではないか」という雰囲気に傾いてしまう。

部下はリーダーの指導力発揮を求めている

 言い出しっぺに口火を切らせることには、発言者としての責任を意識させる狙いがある。人は自分から言ったことには責任を感じるものだからである。
 したがって言い出しっぺが口火を切ったら、リーダーの役割としては、その場の全員がそれに賛同するように誘導することが重要となる。
 上から(会社から)押し付けられたものでなく自主的に出てきた意見であるという事実を明確にして、それを記録しメンバーの記憶として残すことに意味があるのだ。

 このようなプロセスにおいては、デキる部下ほどリーダーが指導力を発揮してくれることを希求しているのである。リーダーは、このことを決して見落としてはならない。

竹本次郎(たけもとじろう)/経営コンサルタント。鹿児島大学卒業。東京都労働経済局商工指導所、上武大学大学院教授を経て現職。著書に『トータルコストダウンの進め方』、『コンサルティング理論と技法』など。

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ビジネスパーソンの8つの欲求

 ビジネスパーソンの心理を覗いてみよう。そこには、自分で選びたい、成し遂げたい、征服したい、認められたい、支配したい、危険を避けたい、仕事をしたい、公平を求めたい...。この8つの欲求がある。この心理を理解し、活かすことがリーダーの役目である。


人の心の根底にある欲求

 場外馬券売場に群がる紳士たちの目が輝いている理由として、5つの条件があることは、前回述べたところである。
 今回は、少し違った角度から、人が持つ欲求というものについてみてみたい。

 筆者のコンサルタントとしての経験則として、ビジネスパーソンの心理には、以下の8つの欲求を見出すことができる。

(1)「選びたい」という欲求
 ――自分で選んだ物には愛着が持てるが、与えられた物にはさほど愛着がもてない。

(2)「成し遂げたい」という欲求
 ――目標を持つ、あるいは与えられると、それを達成しようという意欲が出てくる。

(3)「征服したい」という欲求
 ――競争相手がいると、相手を負かしたい、勝ちたいという意欲が出てくる。

(4)「認められたい」という欲求
 ――「豚もおだてりゃ木に登る」である。誰しも褒められて悪い気はしない。

(5)「支配したい」という欲求
 ――自分の物にしたいと思い、自分の物ほど大切に扱う。

(6)「仕事をしたい」という欲求
 ――「土方ころすにゃ刃物はいらぬ、雨の3日も降ればよい」。説明はいらないだろう。

(7)「危険を避けたい」という欲求
 ――「君子危うきに近寄らず」。誰しも危険な地域や仕事は避けて通りたいものだ。

(8)「公平を求めたい」という欲求
 ――依怙贔屓(エコヒイキ)を嫌う心理は誰にでもある。

 組織のリーダーにとって大切なことは、この8つの心理をよくわきまえ、部下とのコミュニケーションにおいて配慮を忘れないことである。それが部下のモチベーション・アップにつながり、組織の活性化につながっていくのだ。

部下の心理を読むことがリーダーの仕事

 仕事を指示し、作業分担を決めるにしても、これらの欲求を常に意識して、実施することを忘れてはならない。
 指示・命令・任務付与には、モチベーションへの影響やタイミングを考えるとともに、部下に対して、その目的・理由の適切な説明が求められる。相手の理解・納得を得ること、納得を得るまでに至らない場合でも、少なくとも理解を得るために必要な措置は講じておく必要がある。

 こうした欲求は成人に固有の心理であるとは限らない。むしろ子供のほうがそれらを端的に表す場合が多い。自我の確立された成人がこうした欲求を自ら口にすることはむしろ少ない。
 であるからこそ、部下のそうした心理を読み取り、適切に対応することが、リーダーには求められている。


竹本次郎(たけもとじろう)/経営コンサルタント。鹿児島大学卒業。東京都労働経済局商工指導所、上武大学大学院教授を経て現職。著書に『トータルコストダウンの進め方』、『コンサルティング理論と技法』など。

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人を動機づける5つの要件

 人は、自分で情報を集め、分析・判断し、選択し、意思決定し、リスクを負い、そして利得ができる条件が揃ったとき、最高に昂揚する。場外馬券売場に集まる人たちの目が輝いているのはその条件を満たしているからだ。

自分で情報を収集し分析・判断し、意思決定する

 筆者がかつて勤務していたオフィスの隣に場外馬券売場があった。競馬が催される週末には、馬券を買いに来る人々でにぎわう。ランランと目を輝かせて人々が集まってくるのである。
 彼らは、皆一様に競馬新聞に視線を集中させ、赤鉛筆をなめながら何かマークを付けている。ラジオのイヤホンを耳に挟んでいる人もいる。出走の時間が迫ってくると出札窓口は黒山の人だかりとなり、TVモニターの前はレースに釘付けとなる人々で溢れた。

 そうした彼らの行動に接しているうちに、筆者は、彼らの目がなぜ燃えているのかに興味を抱くようになった。その結果、次の5つの要素が働いていることを発見した。
 (1)自分で、情報を集めている
 (2)自分で、情報を分析している
 (3)情報分析の結果をもとに、自分で選択し、意思決定している
 (4)身銭を切っている(リスクを負っている)
 (5)常に、万馬券を期待している
 この5つの要件が揃ったとき、人は最高に燃える、意気が上がるのだということに気づいたのである。

社長は毎日、馬券を買っている

 この場面を会社の経営に適用して点数化してみよう。経営トップは上記の(1)~(5)の要件を全て満たしているので5点満点である。毎日馬券を買っているようなものだ。
 他方、新入社員のA君は、(2)~(5)の要件をほとんど満たしていない。(1)の情報収集も、自分の意思というよりは上司の指示で動いているだけなので、実際には0.5点といったところだ。
 社長から点数の高い順に並べてみると、副社長・専務・常務・部長・課長・係長とほぼ職階層順になる。

 さて、あなたが上司の立場で、やる気のない部下が多くて悩んでいるとする。そういう場合に部下にやる気を起こさせるためには、(3)の意思決定や(4)のリスクの要件をいかにして拡大してやれるか、という点が重要になろう。

 すなわち、まずやってほしいことは、
 (A)権限委譲を進め、褒賞の機会をつくること
  (自己責任で意思決定する機会を増やし、成功したら褒めたたえ金一封等で報いる)
 (B)信賞必罰のしくみを機能させること
  (ただし、失敗した場合にはそれなりのペナルティを与えるようにする)
である。部下の目がランランと輝きだすに違いない。

 なお、罰を与えるという点では、「いかにやる気を殺がずに叱るか」も大切になるが、これについては別の機会に述べることとする。

竹本次郎(たけもとじろう)/経営コンサルタント。鹿児島大学卒業。東京都労働経済局商工指導所、上武大学大学院教授を経て現職。著書に『トータルコストダウンの進め方』、『コンサルティング理論と技法』など。
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 本シリーズでは、ベテラン経営コンサルタント・竹本次郎先生にゲスト執筆を担当いただき、長年にわたる経営コンサルタント、大学教授としての知見をベースにしたビジネスシーンで役立つ「物事の考え方・とらえ方のヒント」を紹介していきます(月一更新予定)。
・・・管理人

人をみて法を説け

 サラリーマンは毎日、会社や得意先などいろんな人と様々な場面で接しながら自分に課せられた任務・仕事をこなしています。
 相性のよい人ばかりならよいのですが、中には何となく虫の好かない人もいます。どのように対応すればよいのか、迷いながら日々を送っている人も多いでしょう。

 ともあれ、人が百人寄ると百通りの顔が見られるように、それぞれが個性に満ちた存在です。個性は顔かたちばかりでなくその行動様式も同様です。とりわけ主義・主張に関する事がらについては、その是非が問われる場合にはさまざまな論議を呼び起こすことも少なくありません。
 もの静かな人、口数の多い人、議論好きの人、いつもにこにこ笑顔を絶やさない人、怒りっぽい人など、いろんなタイプが見られます。
 しかも面倒なことに、表面に表れている性格と奥に潜んでいる性格とが必ずしも一致しない例もあるのです。皆さんの周りでも、怒りっぽいのに意外と人情深く面倒見がよい上司など、このような例がすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。

 では、なぜ意見や主張の違いが生ずるのでしょうか。性格の違い、思想の違い、生活様式の違いなど、さまざまな要素の違いを見逃すことができません。
 したがって人を説得する必要に迫られた場合には、その人物の性格や思考様式、発想様式についてあらかじめ心得ておくことが肝要となりましょう。つまり"人をみて法を説け(解け)"ということが、あらゆるビジネスシーンで大切になってくるのです。


竹本次郎(たけもとじろう)/経営コンサルタント。鹿児島大学卒業。東京都労働経済局商工指導所、上武大学大学院教授を経て現職。著書に『トータルコストダウンの進め方』、『コンサルティング理論と技法』など。
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