コラム 現場で役立つ考え方のヒント 第2回
2011 10月24日
人を動機づける5つの要件
人は、自分で情報を集め、分析・判断し、選択し、意思決定し、リスクを負い、そして利得ができる条件が揃ったとき、最高に昂揚する。場外馬券売場に集まる人たちの目が輝いているのはその条件を満たしているからだ。
人は、自分で情報を集め、分析・判断し、選択し、意思決定し、リスクを負い、そして利得ができる条件が揃ったとき、最高に昂揚する。場外馬券売場に集まる人たちの目が輝いているのはその条件を満たしているからだ。
自分で情報を収集し分析・判断し、意思決定する
筆者がかつて勤務していたオフィスの隣に場外馬券売場があった。競馬が催される週末には、馬券を買いに来る人々でにぎわう。ランランと目を輝かせて人々が集まってくるのである。
彼らは、皆一様に競馬新聞に視線を集中させ、赤鉛筆をなめながら何かマークを付けている。ラジオのイヤホンを耳に挟んでいる人もいる。出走の時間が迫ってくると出札窓口は黒山の人だかりとなり、TVモニターの前はレースに釘付けとなる人々で溢れた。
そうした彼らの行動に接しているうちに、筆者は、彼らの目がなぜ燃えているのかに興味を抱くようになった。その結果、次の5つの要素が働いていることを発見した。
(1)自分で、情報を集めている
(2)自分で、情報を分析している
(3)情報分析の結果をもとに、自分で選択し、意思決定している
(4)身銭を切っている(リスクを負っている)
(5)常に、万馬券を期待している
この5つの要件が揃ったとき、人は最高に燃える、意気が上がるのだということに気づいたのである。
社長は毎日、馬券を買っている
この場面を会社の経営に適用して点数化してみよう。経営トップは上記の(1)~(5)の要件を全て満たしているので5点満点である。毎日馬券を買っているようなものだ。
他方、新入社員のA君は、(2)~(5)の要件をほとんど満たしていない。(1)の情報収集も、自分の意思というよりは上司の指示で動いているだけなので、実際には0.5点といったところだ。
社長から点数の高い順に並べてみると、副社長・専務・常務・部長・課長・係長とほぼ職階層順になる。
さて、あなたが上司の立場で、やる気のない部下が多くて悩んでいるとする。そういう場合に部下にやる気を起こさせるためには、(3)の意思決定や(4)のリスクの要件をいかにして拡大してやれるか、という点が重要になろう。
すなわち、まずやってほしいことは、
(A)権限委譲を進め、褒賞の機会をつくること
(自己責任で意思決定する機会を増やし、成功したら褒めたたえ金一封等で報いる)
(B)信賞必罰のしくみを機能させること
(ただし、失敗した場合にはそれなりのペナルティを与えるようにする)
である。部下の目がランランと輝きだすに違いない。
なお、罰を与えるという点では、「いかにやる気を殺がずに叱るか」も大切になるが、これについては別の機会に述べることとする。
竹本次郎(たけもとじろう)/経営コンサルタント。鹿児島大学卒業。東京都労働経済局商工指導所、上武大学大学院教授を経て現職。著書に『トータルコストダウンの進め方』、『コンサルティング理論と技法』など。
筆者がかつて勤務していたオフィスの隣に場外馬券売場があった。競馬が催される週末には、馬券を買いに来る人々でにぎわう。ランランと目を輝かせて人々が集まってくるのである。
彼らは、皆一様に競馬新聞に視線を集中させ、赤鉛筆をなめながら何かマークを付けている。ラジオのイヤホンを耳に挟んでいる人もいる。出走の時間が迫ってくると出札窓口は黒山の人だかりとなり、TVモニターの前はレースに釘付けとなる人々で溢れた。
そうした彼らの行動に接しているうちに、筆者は、彼らの目がなぜ燃えているのかに興味を抱くようになった。その結果、次の5つの要素が働いていることを発見した。
(1)自分で、情報を集めている
(2)自分で、情報を分析している
(3)情報分析の結果をもとに、自分で選択し、意思決定している
(4)身銭を切っている(リスクを負っている)
(5)常に、万馬券を期待している
この5つの要件が揃ったとき、人は最高に燃える、意気が上がるのだということに気づいたのである。
社長は毎日、馬券を買っている
この場面を会社の経営に適用して点数化してみよう。経営トップは上記の(1)~(5)の要件を全て満たしているので5点満点である。毎日馬券を買っているようなものだ。
他方、新入社員のA君は、(2)~(5)の要件をほとんど満たしていない。(1)の情報収集も、自分の意思というよりは上司の指示で動いているだけなので、実際には0.5点といったところだ。
社長から点数の高い順に並べてみると、副社長・専務・常務・部長・課長・係長とほぼ職階層順になる。
さて、あなたが上司の立場で、やる気のない部下が多くて悩んでいるとする。そういう場合に部下にやる気を起こさせるためには、(3)の意思決定や(4)のリスクの要件をいかにして拡大してやれるか、という点が重要になろう。
すなわち、まずやってほしいことは、
(A)権限委譲を進め、褒賞の機会をつくること
(自己責任で意思決定する機会を増やし、成功したら褒めたたえ金一封等で報いる)
(B)信賞必罰のしくみを機能させること
(ただし、失敗した場合にはそれなりのペナルティを与えるようにする)
である。部下の目がランランと輝きだすに違いない。
なお、罰を与えるという点では、「いかにやる気を殺がずに叱るか」も大切になるが、これについては別の機会に述べることとする。
竹本次郎(たけもとじろう)/経営コンサルタント。鹿児島大学卒業。東京都労働経済局商工指導所、上武大学大学院教授を経て現職。著書に『トータルコストダウンの進め方』、『コンサルティング理論と技法』など。