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心理学の"お得な"入門書

 新聞を止めて1週間ほど経ったある日、「○○新聞の本社事業部から来た」といって営業パーソンが訪ねてきました。

 「怪しいものではありません」と首から提げた身分証を提示して、
 「3ヵ月間のご契約ありがとうございました」といって粗品をくれます。

 (3ヵ月? 確かに契約期間は3ヵ月だけど、トータルでは15年以上のはず)と思いつつも、話に乗る気がなかったので黙っていると、「3ヵ月ありがとう」「3ヵ月ありがとう」を連発します。

 この人は知ってて言っているんだな、とピンと来ました。わざと「3ヵ月」と言って、こちらが「うちは15年も取っているんだよ。知らないのか」と言うのを待っている。反論させることでトークにひきこもうという戦術。「15年も取っている」と口に出すことで、こちらのロイヤルティ感情も呼び覚まされますし・・・。巧みに心理を突いてくるセールストークだな、と思いました。

 営業の仕事には心理学が役立ちます。でも、本を1冊読むのは気が重い、という方も多いでしょう。そういう方に、先日、偶然見つけて"はまった"文庫本を1冊、紹介したいと思います。





相手の『ノー』にはそんなに深い意味はない

  心理学者でコンサルタントとしても活躍される内藤誼人さんの著書です。(どんなに怪しいことが書いてあるんだろう)と、うっかり立ち読みしてしまい、止ま らなくなりました。書名に反して、中身はいたって健全! 心理学を、偉人の名言や古今東西の格言に結びつけて解説し、人生やビジネスシーンで活用しよう、 という内容です。

 たとえば、「どんな相手でもスグに虜にしてしまう『対人術』」と題された2章では、

  世間の人間の5分の1はいつでも何にでも反対する。(ロバート・F・ケネディ)

という名言を紹介して(p.63)、

 「人間というのは、あまり理由がなくてただ何となく『ノー』ということが多い」

と心理学のセオリーを語り、

「相手に『ノー』と言われたら、『こんにちは』と挨拶されたのと同じくらいに聞き流すのが正解である。相手の『ノー』にはそんなに深い意味はないからだ」(p.65)

と処世術につなげる、という具合です。
 「ノー」と言われて落ち込むことの多い小心者のわたしには、まさに"福音"(?!)の言葉でした。

お気に入りの言葉が1つ2つ、必ず見つかる

 文庫のわりに文字も大きく、読むのにそれほど時間はかかりません。それでいて、「ホーンズ効果」や「ハロー効果」、「波及効果」など心理学のセオリーもかじれますし(本格的に学びたい人は専門書をどうぞ)、「へ~」、「なるほど」という言葉が数多く登場します。

 わたしの気に入っているのは、MITの教授が提唱している「バブソンの法則」(p.163)。

 「1日1時間勉強すると1年でひとつの専門家になれる」
 「いったん習慣化すれば、自分でも気づかないうちに、信じられない地点までいけるといえよう」

 "習慣化"は高澤がメールマガジンでも薦めていましたが、1年で一家言持てるとなれば、モチベーションも格段に高まります。

 通勤や出張等の移動中に気軽に読めて、お気に入りの言葉が1つ2つ、必ず見つかる、"お得な"入門書だと思います。
(宮崎洋一)

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 管理人の宮崎です。
 このページでは、主宰高澤彰と私、それからゲスト執筆者が、ビジネスや営業スキルの向上に役立つコラムを連載しています。
 私の場合、前職が出版社勤務(『法人営業実習ノート』の担当編集者)でしたので、「本」をテーマに進めていきます。新刊、既刊、古典を問わず、またジャンルもビジネス書に限定せずに様々な本を取り上げていくつもりです(様々といっても1年にせいぜい15冊ですが・・・)。

15冊の本で夢が叶う!?

 世界で初めて営業マニュアルをつくり、〈セールスの父〉と言われるジョン・パターソンの教えを現代のビジネスシーンに合わせて解説した『パターソンの営業法則』という本があります(ジェフリー・ジトマー著/浦谷計子訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2005年)。
 その74ページに、読書の大切さを表現したこんな言葉がありました。

「あなたなら15杯のビールを選ぶか、15冊の本を選ぶか。ビールを選べばたどり着くのはトイレだが、本を選べばトイレと言わず、レストランのオーナーにだってなれる」

 本を作ることを仕事にしている者にとってはたいへんありがたい言葉です。でも、「本ならばなんでもいい、ということではないだろう。仕事に大いに役立つ本もあれば、『読んだ時間を返してくれ』といいたくなるような本もある」という読者の声も聞こえてきそうです。
 たしかに、読んでられないヒドい本もありますが、読む側の気持ちや心構えの問題も大いに関係しているのではないでしょうか。何かに役立てようと必死になって読んでいると文章の中から答えが"浮き出て"くるようなことも、しばしばあるものです。
 先ほどの言葉でいえば、「レストランのオーナーになりたい」というビジョンをしっかり建て、そのうえで自分のアンテナに掛かってきた本を必死になって読む。そうすると自ずと道は開けてきて夢は必ず実現する、ということなのだろうと思います。
 『パターソンの営業法則』には、他にもまだまだ参考になる"至言・名言"がたくさんあります。折を見て再度ご紹介したいと思います。




 次回は心理学の分野から1冊、ご紹介する予定です。
(宮崎洋一)
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