儲けてなんぼ!!!「法人営業」実習ノート
〜ほんとうに必要な「営業実務」がわかる本
A5判 160頁 定価1680円(税込) ISBN 978-4-496-04282-9
高澤 彰(著)
(有)タカザワ企画代表取締役 中小企業診断士
本書の著者,高澤彰氏を知ったのは,ほんの2年ほど前であろうか。高澤氏とは中小企業基盤整備機構の創業・経営革新支援事業(ビジネスアイデア支援モデル事業)で営業システム構築の専門家として,中小企業基盤整備機構関東支部の上島東一郎氏(中小企業・ベンチャー総合支援センター統括プロジェクトマネージャー)より紹介されたのがきっかけである。爾来,我が社の営業マンに高澤氏より毎月「喝」をいれて貰っている。それだけに,多少は高澤氏のことを知っているつもりであったが,本書の原稿に初めて目を通したとき,高澤氏の営業に対する的確な視点と,それを標準化し明文化する能力に正直「これを,あの高澤さんが書いたのか」と驚いた。加えて,高澤氏が営業マン時代に培った経験に裏打ちされた自信のほどが行間に感じられた。これほどの才能を持っている人間と出会うことは望外の喜びである。
ただ,それだけに本書は,「競合先の営業マンには,絶対,読ませたくない本」である。営業実務は多くの人から,常々ブラックボックスであるとか属人的であるとかいわれている。確かに,そういった面があるのも否めない。本来,営業マンといったものは自ら考えて,行動し,その成果を自ら噛み締める者である。また,独創的な発想,強烈な人間的魅力や卓抜なコミュニケーション,それらを縦横に市場の中で発揮しながら実績を上げていく,それが営業の醍醐味である。
しかしながら世の営業マンすべてがそのようなスキルを持っているとは限らない。いや,そのようなスキルを持った営業マンは稀である。ビジネス雑誌を読んでいると,よく2:6:2の原則があるといわれている。つまり,どんな集団でも,優秀層が2割,普通くらいのが6割,残り2割はパッとしないというのだ。一説によるとサルの集団でも同じ比率になるらしい。できる奴は何も言わなくてもできる,できない奴は何を言ってもできない,百回繰返し言っても千回繰返して言ってもできない。できる奴,できない奴を合わせた4割に相当する層には言葉はいらない。必要なのは残された大多数である6割の「普通の連中」である。
要は,この「言われたら,なんとなくやる『普通の連中』」をどのように戦力化できるかが鍵である。三択や五択の入試問題で学生時代を過し,仕事に就いてもマニュアル化されることを求めることが普通になり,そうしたものを覚えることに慣れている「普通の連中」にとっては,濃密な経験に裏打ちされた,しかも判りやすい本書は,まさに甘露の雨である。それだけに本書を読めば営業スキルが格段に上がることは間違いない。万が一,競合企業の営業マンが本書を読んでいるとしたら,背筋が寒くなる話である。
また,本書を難解という営業業務に携わる諸兄がいたら,まず営業職の適性がないか,営業に初めて携わる人であると考える。
しかし,営業実務に従事され,常に「営業とは何なのか」という問いをわずかでも持ち続けている人が本書を読まれたなら,必ず強い磁力に惹きつけられるように,本書のページを繰ってゆかれるだろう。
よく,営業実務関係の本には,「しっかりと市場を見据えマーケティングをして,ターゲットを明確にして」などと書かれている。分析,営業計画書作成重視の考え方である。確かに,市場分析,計画立案は重要である。しかし,それらは「所詮,絵に描いた餅である」と高澤氏は話される。「絵に描いた餅を本当の餅にするには行動あるのみ」と高澤氏は常々主張されている。「それも実践可能な具体的な計画であるべきである」とも言われている。常人には真似が出来ないことを謳っても,物理的に不可能な計画を立案しても実践できるわけがない。計画倒れになるのがオチである。
本書は物理的に実践できることしか書いていない。「普通の連中」が普通にやれることだけ書いてある,だから極めて現実的であり,判りやすいのである。
ここで高澤氏の経歴にも触れておこう,敢えて,評するなら,「驚くべき人物」ということがいえる。
中堅の機械工具商の勤務経験で,極めて抜群の業績を導き出した後,経営コンサルタントとして独立。代理店業務,コンサルティング業務,FA関連機器・メカトロニクス製品販売及び支援,各種調査,ベンチャー支援,経営診断・指導,各種研修・講演企画及び実施および執筆活動を精力的にこなされているというだけで,常人の域を超えている。学生時代には柔道部にも籍を置き,講道館柔道2段,大学生活を送っていた頃には応援団長を勤められた。ロードサイクル・マラソンが現在も継続されていると聞くと,硬派のイメージであるが,中小企業診断士,1級販売士,同登録講師資格,2級技能士(空気圧装置組立て作業)などの各種資格を有する理論派でもある。
高澤氏は,その「頑健な肉体」と「柔軟な頭脳」を武器に,通常のビジネスマンが体験する何倍もの凝縮された経験をもつ。氏のユニークさは,もうひとつ。高澤氏ならではの,高澤氏にしか成し得ない手法と,誰でも理解できる概念・実践できる手法を棲み分けし,後者を社会に還元してこられたことである。
特に,モノづくりの経営改革・営業力強化・販売支援には他の追随を許さない実績の持ち主で,「誰にでもわかる」「誰にでもできる」そして「誰もが実績を上げ,自信を抱ける」指導手腕には定評があると感じる。誰にでもわかる言葉で,肝となる理念と現実的手法を,これほどまでに解説できる人は少ない。
営業マンや中小企業経営者なら誰もが抱えるであろう,「売る力」「稼ぐ仕組み」に,かほどの過不足のない適切な解説を行った書には,かつて出会ったことがない。こうした本の推薦文というのは,通常依頼されて書くものだが(実際に依頼されたのだが),この本に限っては,私が志願してでも書かせていただきたいと思った。
本書が,まじめに営業を考えている人や業績が伸び悩んでいる中小企業経営者に光明を与えることは間違いない。「儲けてなんぼ」実にいい言葉ではないか。
儲けたいと思っている人々に本書があまねく与えられんことを切に願っている。
野長瀬 裕二
専門:中小ベンチャー企業経営,技術経営(MOT)
中小ベンチャー企業支援の現場で高澤氏とは,頻繁に顔を合わせるが,なくてはならない存在であるといつも感じている。
高澤氏のすばらしいのは,どのような問題に対しても,ストライクゾーンに入ってくるように仕事をスピーディにこなすところにある。
課題に直面する中小ベンチャー企業は,スピーディな問題解決を渇望している。経営の高邁な理論より,目の前の困っている事柄を一つ一つどのように片づけていくのか。高澤氏は,それができるプロである。
彼の得意分野は,営業・販売であるが,私の専門分野である中小ベンチャー企業経営の領域では,営業上の課題を抱えていない企業などめったにお目にかかることはない。
ある商品が売れないのは,商品が悪いのか,売り方が悪いのか,営業マンが悪いのか,売る相手を間違えているのか。
売上は計上されてもキャッシュの回収はできるのか,さらには,クレームがあったときにそれをチャンスに変えることができるのか。
こうした問題に,中小ベンチャー企業の営業の現場では日々直面する。
そのような時に,高澤氏は,本質を素早く把握し,行動に移すことができる貴重な支援者である。
中小ベンチャー企業の悩みの多くは,売り上げを計上して儲けることで癒される。
収益が伸びないのに,例えば,斬新な人事制度や組織戦略を立案するような企業もあるが,そうした試みは機能しないことが多い。
むしろ,最初は人材不足かつアバウトな組織であっても,収益が増えるに従い良い人が入ってきて,組織も変身していくのが,成功する企業のパターンである。
まずは,喜んで下さる顧客をいかに見つけ,いかにその対価を受けとるか。
伸びる企業は,この点がたいていしっかりしている。
IT化,組織戦略,知的財産管理,ISO取得といった守りの分野,コスト低減等の合理化領域においては,有能なコンサルタントに出会うことが多い。
ところが,こと営業,さらには新事業立ち上げ時の売り上げ確保策の分野において,高澤氏のように企業支援をできる人は限られている。
それは,どのような顧客から対価をいかに受けとるかという営みについては,まさに経営者が本領を発揮すべき領域であるからだ。この分野を支援するには,経営者と同じ目線を持った上で,泥臭い営業に付随する実務をこなす能力が求められる。
今回本書が出版されたことは,我が国の販売の最前線に立つ皆さんにとり,福音であるといえよう。
内容的に,営業がマスターすべき各種要素が網羅されており,その上で実践的である。
また,所々に高澤節ともいえる営業に関する思想がちりばめられており,営業をどうすべきか悩む経営者の皆様にもよき指針となるだろう。
——顧客のニーズを泥臭く把握し,高いモチベーションで売りまくる。売った商品の代金はきっちりと受け取り,満足してもらいリピートにつなげる。——
この本の読者の皆様の企業が,今日からパワーアップして元気になることを期するものであります。
わたしがふだんお付き合いさせていただいている中小の製造業では,「つくる」ということに対しては非常に熱心なのですが,つくったものを「売る」ということに対しては,あまり熱心でない,というのが実感としてあります。いいものはつくるのだけれども,「さあ売ろう」となったときに売るためのいい手段を持っていないのです。つまり「どう売るか」ということを前提にしたモノづくりになっていない,そこに大きな課題があるように思います。営業についての体系だった考え方が整理されていないということもその理由の1つでしょう。
そういうなかで,高澤さんが,「営業実務」すなわち「売る」ことについて,中小企業のトップの方々・営業部門のリーダーの方々を主な対象として本書を書かれたというのは,まさに時機を得ているし,非常に意義深いものがあります。ぜひひとりでも多くの読者に本書を読んでいただき,儲かる企業になるための営業実務を身につけてほしいと思います。
高澤さんの人柄を一言でいうと,ひじょうに「きまじめ」な人です。ものごとをまじめに捉えている人だと思います。だから人のいうことを素直に聴くことができる。自分の考えをお持ちなのでしょうけれど,まず人の考えを聴く。高澤さんもわたしも中小企業診断士なのですが,わたしは中小企業診断士の役割は人の話を聴くことだと思っているのです。心から聴く。全身全霊で聴く。トップや幹部の思いや悩みを全身全霊で心から聴く,というのが中小企業診断士にとって一番大事なことだと思うのですね。逆にいうと,ご自身の持論をどんどんしゃべる人というのは,中小企業診断士としては100%ではない。第一線でご活躍の方は,みなさん全身全霊で聴く姿勢を持っていらっしゃるのではないでしょうか。
そういう意味では,高澤さんは「まじめに聴こう」という姿勢を常に持っている。全身全霊で聴こうとしています。心を込めて聴かないと,なかなか本当の話は聴けないのです。現場でいつも思うことなのですが,経営者の方々は,だれでも自分の経営についてたくさん考えているのです。いちばんよく考えているのはトップなのですね。ですから経営者の方が思っていることを100%聴き出すことができれば,解決策はおのずから出てくるものなのだと思います。中小企業診断士がすべての解決策を持っていて湯水のごとく湧いてくるのならいいですが,そんな人はまずいませんからね。
最近「ホンモノ」というキーワードをよく使います。ホンモノの経営者が,しっかりとした明確な理念をもってやらないとこれからの企業は生き残れません。要するに「ホンモノの時代」になっている。
営業マンもやはりホンモノを意識なければならないと思います。テクニックもさることながら,心からする営業というのがホンモノなのではないでしょうか。ホンモノの営業というのは人と人との信頼のうえになりたつものだと思います。信頼というのは,お客様のほうが「おう,アイツだったらいいよ」というもので,自分から「オレを信頼してください」というものではない。心から,身体からにじみ出てくるのもがあってはじめてホンモノの営業になってくるわけです。
高澤さんの仕事はホンモノです。どんなことにも揺るがぬ信念を持って取り組まれている。彼はホンモノの人間だからそれができるのです。本書を読まれた読者は,意識するしないにかかわらず「ホンモノの営業」をマスターされるのではないでしょうか。「心がこもった営業でないといくら高等なテクニックを身につけたとしてもダメだろう,テクニックと一緒に心も鍛えようよ」というのが,本書の基本に流れる高澤さんの哲学だと思います。
最後になりましたが,高澤さんが本書に書かれたような見識を今後もさらに深めていかれて,中小企業のため,また社会のために,より一層貢献されていかれることを心から期待します。